2011-02-15

学校視察レポート③

今日は、前回お伝えした日本語学校の隣にある公立学校を紹介します。

訪れたのは、日本でいう小学生と中学生に当たる生徒が通う学校で、
Américo Sugaiという日系人の方が創設者です。
でも、実際は日系人の生徒はとても少ないです。





創立は1972年。
できてから40年近くになります。








それでも、
古さを感じさせない教室で、
落ち着いて学習に取り組める
きれいで整った環境でした。







先生の質問に対する挙手も
多かったです。
子どもたちは
授業に意欲的に参加していました。





さて、ブラジルでは公立の学校は大学まですべて無料。
単純に考えると、
小学校から大学まで公立に通えばいいのではと思いがちです。
                                                             
しかし、一番お金のかかる大学時代を公立で過ごそうと考える人が多ければ
公立大学入試のレベルは当然上がります。
そして、その難関を突破するためには準備期間が必要。
ブラジルは、警察や教員など公務員に対する待遇の充実度が日本に比べて低く、
賃金の低さなどからストライキが起こることもあるので、
公立学校では充実した教育の実現が難しい状態にあります。
                                                             
その反面、私立学校では、
セキュリティや教材などのレベルが高く、安定した教育が受けられます。
当然ながら学費も高いですが、
その分教員の給料も高いので、結果的に教育の充実度は上がります。
(もちろん、教員はお金に関係なく教育に対して真摯に取り組むべきだと思いますが、
待遇があまりに悪いと、仕事への意欲が激減してしまうのは理解できます)
                                                             
こうした理由から、公立大学に入ろうとするならば、
学費が高くても高校までは私立学校に通う方がよいとされているのです。
よって、
公立の小中高校に通う生徒には生活水準の低い家庭の子どもが多くなり、
そうすると、子どもの教育に関する親の関心の低さも問題になってきます。
                                                             
政府は、この政策として、公立学校に通う生徒をもつ家庭に対して
カバン、学用品、制服などの学校に必要なものを無償で支給しています。

                                          
イスにかけられた政府支給のカバン。
この学校では
支給カバンを使っている生徒が
比較的多かったです。
ですが、
制服はほとんど着ていませんでした。
                                          
                                          
このように、政府が支給しても使わない場合がけっこう多く、
政策の空回り感は否めません。
他にも、粉ミルク2kgが年間2パック支給されているそうです。
しかもNestle(ネスレ)のおいしいやつらしいです。
びっくりしましたが、食料がからむと、
生活に困っている家庭であっても、教育への関心が少しは増すだろうと
考えられているからだとか…。
                                                             
日本でも話題になったけれど、
家庭の生活水準と子どもの学力はやっぱり比例するのかなぁ。
すこしさびしい感じがします。
                                                             
実際に、わたしの勤める学校(私立)の生徒たちは、
宿題を親に見てもらったり、工作を一緒に作ったりして学校に提出しています。
ですが、公立校に通う子どもたちは親と一緒に家で勉強することが少ないようで、
学力がなかなか伸びない子どもが多いように感じました。
加えて、先述のストライキなどが理由で授業が遅れることもあるので、
その年によって学習進度が違うということも起こるそうです。
                                          
3年生の算数では、
数字の穴埋めに取り組んでいました。
0から49までの数字を順番に書くのです。
                                          
                                          
                                          
わたしの学校では、2年生で掛け算と割り算をすでに習っています。
(ただ、それも少し早すぎるので、ついていけていない生徒もがいるのも実際ですが…)
こうした現状を目の当たりにすると、
子どもの発達段階を考慮した学習指導要領が
どこの学校でもきちんと実施できる環境にある日本との差を感じます。
                                          
支援の必要な生徒には、
先生がマンツーマンで教えていました。
でも、その間
ほかの生徒はずっと自習です。
安定した教育を提供する難しさを
実感しました。

                                                             
ところで、
この学校には、隣にある日本語学校で午前中勉強した子どもたちも通っています。
日本式のしつけに基づく教育を午前中みっちり受けてきた生徒たちですが…、



机の上にはジュース!!
やっぱり、
なかなか教育は浸透しないものです。
                                         
                                         
                                                            
「飲食禁止」とか「姿勢を正しく」とか、目の前にいる子どもに注意できても、
実際にその子がそれを理解していないと、生きた教育になりません。
この子たちが悪いのではなく、
授業している先生もドリンクを机上に置いているから、仕方ないのです。
(ブラジルの学校では、授業中の飲食は日本ほどタブーになってない)
                                                             
子どもは環境によって大きく変わっていくものです。
変えられる環境とそうでない環境があるし、
環境に応じて自分が変わるべき場面と変わらずにいるべき場面もあるので、
教育現場って本当に難しいなと思います。
                                                             
それでも、将来子どもたちが自分の行動を選ぶときに
それぞれの学校で学んだことが一つの判断材料になるといいなと思います。
                                                             
                                                             
なんかダラダラ書きましたが、
今回の公立学校見学は
収穫が多くてとても貴重な体験になりました!!

2 件のコメント:

  1. ブラジルもいろいろ複雑だね・・・
    公立大学に入るために私立の学校に通うって、
    ほんと矛盾してるね。
    でも日本もそんな感じになりつつあるよね 汗
    日本式のやり方がすべて正しいとは思わないけど、
    ジュース飲みながらの授業は違和感あるなぁ・・・

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  2. 日本でも学校選択制に賛成とかいう人が結構いるけど、
    やっぱりこうゆう状況を見ると、
    それって二極化に拍車をかけるだけな気がする…。

    ジュース飲んでたりガム噛んでたり、
    きっとリエが見たら
    「ありえんがー」って言うと思う!!

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